メンタル不調の部下と面談し相談窓口へつなぐには
こんにちは、ちいさな会社のメンタル面を丁寧にサポートすることが大好きな、ソルラシックのよしだです。
先日とある企業にてラインケア研修をさせていただいたときに、とてもいいなぁと感じたことがあったので、少々アレンジも加えつつご参考までに書かせていただきます。
管理職の方のご参考になりますように。
最初に簡単にご説明すると、ラインケア研修とは管理監督者にあたる方たちを対象にした研修で、従業員の皆さんがメンタル面においても健康に働けるようにするための研修だと考えてください。
部下の方々に異変がないかを察知するための日ごろの観察の仕方、なにか変化があった時の声のかけ方、社内外の相談窓口へつなぐためにどうすればいいかなどを考えたりロールプレイングなどで学んでいただき、実際にそういうことが起きたときに動けるようにするために行っています。
もくじ
部下のメンタル不調のサインに気づく
さて、先日もそのような内容でラインケア研修を進めていました。
多くの会社では、まず最初の“部下の異変にどう気づけばいいのか”というところでつまずく管理職がいます。
もし部下の普段の様子を見ていないとしたら、管理職の方がチームメンバーの様子も分からなくなるくらいの仕事のボリュームを抱えているせいかも知れません。そのような状態を責めているわけではないです。ただ、部下の様子を見れないほどの仕事のボリュームは適正なものとも思えないので、会社や組織として見直すポイントにはなるのではないでしょうか。
“部下の異変にどう気づけばいいのか”につまずく方もいることから、研修では管理職のみなさんに、部下のひとりひとりに対してどんな点に異変が出やすいのかを考えていただくようにしています。調子のいいとき、普通の時、不調の時を比較していくと、なんとなく見えてくるものがあるんです。
ここで出てきたことを管理職同士でシェアしてみると、自分にはなかった気づきのポイントが見えてきたりするので、ぜひやっていただきたいポイントです。そして、できれば定期的に部下を観察するタイミングをつくっておくと、気づきやすくなるのでお勧めです。
観察の癖をつけたければ、1か月間だけは毎朝5分間観察タイムをつくるとか、慣れてきたら毎週月曜日に観察タイムをつくるなどをしておくと、だんだんといろんなことにも気づけるようになり、面白いなと思えるようになってきますよ~。
自分の部下は不調になることはない、いつも元気に働けていると思いたい気持ちはわかりますが、一度それを脇に置いて考えてみると意外と見えることもあります。
上司としてどんなに普段からケアをしていても、仕事以外のこともあいまって不調になることだってあるので、不調のサインに気づいた場合はそのまま事実として認めていいのではと思っています。
今回研修をさせていただいた企業様は、そういうところで自分目線を優先される方がほとんどおらず、サインを事実としてキャッチできている方が多かったので、とても素晴らしいと思いました。
部下に不調のサインが出ている時に一般的に起こりがちなのが、上司である自分のケア不足ではないかとか、采配が悪かったのではと自分を責めてしまう方がいたり、上司としての自分の立場を優先して考えたくなってしまい、自分はちゃんとやっているのに部下が弱いからこうなってしまうのだと自分を擁護して部下を責めてしまう方がいたりします。
でも、誰が「いい」「悪い」ではなく、まずは「事実としてのサイン」に気づければ、それでOKです。気づくのが上司の役割なので、そこが大事なのだということを分かっていただけるといいなと思っています。
不調のサインが分かってきたところで、つぎは「声をかける」ということについて考えていきます。
メンタル不調のサインがある部下に声をかける
これも研修をしていると「クスッ」としてしまったり「心配だなぁ」と思うことが多いシーンです。
先ほど考えてみたような不調サインが部下に出ているときに、なんて声掛けをするかを考えていただくのですが、いざロープレをしようとしたり、考えたセリフを共有してもらおうとすると「その時になればできるので」と言われ、なかなか先へ進まない方がいらっしゃいます。
本当にその時になればできるといいけれど、実際にメンタルの調子が悪い人が目の前にいるといろいろと考えてしまう方が多く、声のかけ方について相談を受けることも多いのです。
この言い方で余計に傷つけてしまわないだろうか、こんなことを言うと更に調子が悪くなるかもしれない…などを考えているうちに声をかけるタイミングが遅くなると、さらに悪化しかねません。
そんな時に、一度でもいいので練習で声掛けをしておくと「あ、こんな風に言えばいいのかも」とアクションを起こしやすくなるのです。
できれば研修などで他の人がいるところでこれをやっておくと「他の人たちも聴いてくれてたし、この声掛けの仕方で大丈夫だ」と思えていると少しは自信をもってアクションを起こせるようです。
自分でいざというときのためのセリフを用意してみるのもいいと思いますが、いざ直面すると「これでいいのか?」という不安は出やすいみたいなので、できれば自分のやり方を他の人たちとシェアしたり、他の人の目線でも見てもらって太鼓判を押してもらうと、気持ちは楽になるようです。
というわけで、自分自身がアクションを起こしやすくするためにも、部下のひとりひとりに対して、どんなセリフがよさそうかを書いておくことをお勧めしています。
※実際に声をかけるときには、別のセリフの方がよさそうだと思ったら、もちろんその状況に最適なセリフを考え直すとか、そのセリフで大丈夫そうかどうかを誰かに相談するのもいいですね。一緒に研修を受けた管理職の方や、産業保健スタッフへ相談するのがお勧めです。
先日研修した会社では、他の人の目を気にすることなく、自分だったら言うであろうセリフを考えられていたので、これもとても素晴らしいと思いました。
なぜそうできるのかなと思ってちょこっと聴いてみたところ、どの方も「自分の役割」についてきちんと認識し、それが肚落ちしているから、余計なことを考えずにストレートに行動に移せるのかなと感じました。
メンタルヘルスに限らず、普段から管理監督者としての役割や振る舞いについての研修などもしておくと、相乗効果もあるのかもしれません。
いざという時の部下への声がけをしやすくコツ
また、もうひとついいなと思えたのは、とってつけたようなセリフではなく、どの方も自然なセリフが言えていた点でした。
「ちょっとコーヒー飲みにいこ」
「最近しゃべれてないし、ちょっとしゃべろうか」
これは普段から部下との関係を築けているからこそだと言えます。
もちろん、言ったら警戒させてしまう可能性も分かったうえで、でも話そうよと自然と誘ってみるって大事だと思います。
仕事以外の話しもできる場を定期的に設定しているので話しやすいという方もおられました。
普段から関係をつくっておくことの大切さが、こういうところに出るなと感じた点でした。
皆様も、ぜひ今からでも少しずつ関係作りをしてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、声をかけるタイミングのポイントは「仕事に影響が出そう」「仕事に少し影響が出ている」ときになります。
いつもの部下と違う点があったら、声をかける時だと覚えておいてください。
例)顔色が悪い、コミュニケーションを避けがち、つらそう、ミスが増えている、落ち着いて話ができていない、遅刻が増えているなど
声をかけてみて自分の思い違いだったらどうしようとか、相手に失礼だったらどうしようなどの心配も湧いてくるかもしれません。
※こちらのブログもご参照ください☟
昔、ガス会社の方に聴いたのですが「ガス漏れかも」という通報があって出動すると、何でもなかったということがたまにあるそうです。寒い冬の夜などは、そんな結果だと大変だなぁと思ったのですが「いいんですよ。何もなかったということが、一番いい結果なんですから」とおっしゃってました。確かにそうです。人の命が無事だというのはなによりです。
メンタルヘルスも同じだと思います。また、「心配して声をかけてくれるような上司なんだ」ということが部下にも伝わるかもしれません。お互いにこれをきっかけにさらに相手のことが分かる機会になるかもしれません。メリットはたくさんあると思うので、遠慮なく声をかけていきましょう。
メンタル不調のサインがある部下を相談窓口へつなぐタイミング
最後に、相談窓口へつなぐポイントです。
部下の異変に気づいて声をかけることはでき、話を聴いたところでどうするかを考えるときの選択肢のひとつがこの『相談窓口』になります。
先日の研修では、どういうときに相談窓口へつなげばいいのかという見極めについて質問がありました。具体的につなぐことを想定して考えてくださっているからこその質問だと思います。この姿勢がまた本当に素晴らしいですよね。
答えは、場合にもよりますが、
「いつものその方と違う点があって、睡眠や食事、仕事に影響が出ていたらつなぎましょう」
ということになります。
メンタル不調の原因が仕事の量やプレッシャーなどにあった場合、管理職が相談に乗ってそこを調整すれば問題は片付くと考える方も多いのですが、それだと半分しか問題が片付かない場合が多いと思います。
片付く部分というのは、直接的なストレス減がなくなるとか減るということですね。
ただし、それですぐにメンタルダウンが回復するかというと少し違うのです。そこをケアするにはやはり相談窓口をうまく使っていただくといいと思っています。
そして、将来的に考えてみると、ずーっと仕事を減らしたままでは難しいのでいずれまた挑戦してほしかったり、そのぐらいの量はできるようになってもらわないと困ることもあると思います。そう考えたときに、もちろんスキルの指導などは必要になりますが、メンタルケアが有効な場合もあるということを知っておいてください。
同じ状況になってもメンタルダウンする人としない人がいますよね。ダウンしやすいポイントや傾向が人によって違うからなのですが、その人がダウンしやすいところがあるなら、同じようなことを繰り返さないためにこころのコントロールを身に着けていく必要があります。そのためにメンタルケアを受けるというのは、とてもいいことと言えます。
ということで、あれこれ書いて長くなってしまいましたが、管理監督者の皆さまにおかれましては、ぜひ「日々の丁寧な観察」を続けていただき「いつもと違う点に気づいた」ら、すぐに「声をかけ」てほしいなと思います。
それが大事な部下の人生にとって大きな違いを生むこと、チームや会社にとっても大きな違いを生むことにつながります。
それでは、今日もいい職場となりますように。
◆ ラインケア研修についてもっと知りたい方はこちら☟
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