中小企業の悩みのひとつ「人手不足」とハラスメントの関係
こんにちは。Sol La Chick(ソルラシック)スタッフの奥村です。
今日も中小企業の経営者、人事ご担当者の皆様に少しでも役立てていただけるような発信になったらいいなと思います。
さて、中小企業の経営者の方々や人事ご担当者からのお話で、よく人手不足で悩んでいるというお話をお伺いすることがあります。
今日はそんな人手不足・人材不足の悩みを解消する一つの解決策をお伝えしたいと思います。
もくじ
慢性化する中小企業での人材不足の要因
人材不足は、現在の日本社会の人口構成として、生産活動の中心にいる人口層(15~64歳)が減り続けていることも徐々に影響してきていると言われています。
生産年齢人口は今後も長期的に減少傾向にあることから、中小企業はますます人材確保に苦しむことが予想されます。
参考資料:https://www.mhlw.go.jp/content/000826227.pdf
<日本の人口の推移 – 厚生労働省>
このような状況下、人材を確保していくために重要なことは、大きく2つかと思います。
- 今いる人材の早期退職を防げられていること。
- 必要数の若手採用ができていること。
つまり人材の流出を防いで、世代交代を見越した一定量の若手人材を採用していくことができれば、人材の安定に至るのは言わずもがなです。
早期退職予防策
~育成プランとモチベーションを上げる仕掛けで退職率をさげる~
そのため、中小企業で整えていったほうが良いことの一つとしては、人材育成の見える化です。つまり、今いる社員を自社で長く活躍できる人材に育成する計画を作り、それを社員に示して実施していくことです。
会社に勤めると、目の前の仕事に一生懸命になるあまり、自らの未来の姿が見えなくなっていきがちです。今の目の前の仕事が将来の自身の飛躍にどうつながってくるのか長期的な道筋が分かれば、目の前の視点から未来への視点に変えて動くことができるので、自然と仕事に対する視座もあがっていきます。そうすれば、仕事に対するモチベーションも上がり、社員のエンゲージメントも向上して、早期退職率も減少していきます。
仕事に限らず何においても、未来の目標や、なりたい姿・ありたい未来がはっきりあるからこそ、頑張れるものだと思います。先日のWBCでの日本代表選手が見事に優勝したのも、やはりそこに、チームで到達したい目標や、選手一人ひとりにとってのありたい未来があったからこそだと思います。 とても良い例を見せてくれたなと感じています。
若手社員採用策
~中小企業を希望する就活生を採用するためにチェックしておきたいこと~
そして人材確保をするための大切な施策のもう一つは、先ほど述べたように『若手社員の採用』です。
若手の人口は少なくなってきてはいるものの、新卒社員等若手社員を採用するための取り組み強化はできる限り進めて人材確保をしたいものです。
特に若手人材を採用するのは難しいという声を中小企業の経営者の方からよく聞きますので、ここが人材不足を感じている多くの経営者の悩みの種かも知れません。
時折、大企業と中小企業が天秤にかけられたら当然ながら就活生は大企業に就職してしまう・・・と嘆く中小企業の経営者や人事の方にお会いすることがあります。 しかし、そんなに心配しなくても大丈夫そうです。実は中小企業にとって優位な嬉しいお話もあるんです。
新卒採用市場で圧倒的に中小企業は不利なのかと思いきや、就活生の中には中小企業を積極的に選んで採用試験を受けていることがうかがえるデータがあります。中小企業の採用試験を受ける学生に中小企業を選ぶ理由を聞いてみると、中小企業には大企業にはない魅力(大企業よりもやりたい仕事に就けやすい、仕事の裁量が大きい、出身地(地方)に本社がある等)があると言います。
そのため、新卒採用必勝法としては、中小企業に就職する優位性を前面に出して学生にアピールすることと言えそうです。また、中小企業ならではの利点と併せて、自社の魅力もアピールできれば、自社への就業を希望される若手を取り込むことができそうですね。
職場環境が良い中小企業には人材が集まる
そしてもう一つ、中小企業で働く利点や自社の魅力をアピールする前に、ぜひ社内をチェックして整備しておきたいことがあります。それは、『職場環境を整える』ということです。
中小企業の採用試験を受けた就活生に、なぜ中小企業を受けたのか、その理由を聞いたデータがあります。
〈キャリタス就活 2023 学生モニター調査結果〉
» 中小企業を受けた理由上位3位
1位:やりたい仕事に就ける 34.7%
2位:会社の雰囲気がよい 34.4%
3位:内定を取りやすそう 27.6%
この結果から見ると、「職場環境を整える」ことが、若手社員を雇い入れるための秘訣だと言えそうです。
職場環境とは、働いている人の職場を取り巻く環境のことで、例えば、暑さや寒さを感じる室温、デスクや職場を照らす照明の明るさ・暗さなどの室内環境のことでもあり、最近ではPCの性能や搭載しているスペックによる作業効率の良さ・悪さも含まれます。
また、それにとどまらず、一緒に働く人との人間関係や、仕事量の多さ・極端な少なさ(仕事が平坦で量的にも少なくやりがいをそぐようなもの)も職場環境にあたるほか、自身が担当する業務の裁量権の有無なども、職場環境に含みます。
過去の同調査の結果でも常に「会社の雰囲気がよい」が上位に入っています。
これを見ると、中小企業への就職を考えている学生がいかに会社の雰囲気を重視しているかがわかります。
中小企業ならではのメリットを就活生にお伝えすること以外に、自社の「会社の雰囲気の良さ」をアピールすることで、若手社員の採用につながるとも言えます。中小企業の経営者・人事担当の方は、ぜひ自社の「会社の雰囲気」をよく観察してみてください。
長いこと同じ会社にいると、自社の会社の雰囲気が良いかどうか?というのが見えなくなることがあります。社内の雰囲気を俯瞰して見られない場合には、ある一つのことに注視して社内を観察してみてください。その「ある一つ」は、社員の皆さんが「挨拶をしているか」という点です。
☑ 社員同士が挨拶しあっている。
☑ 会社にいらしたお客様に対して笑顔で「こんにちは」と声に出して挨拶している。
この2点をよく見ていただきたいと思います。
会社の雰囲気が大きく影響するのは、前述した職場環境の中でも人間関係が大きく影響するところです。つまり職場の人間関係が悪いとおのずと会社の雰囲気が悪くなるとも言えます。
そして、職場の人間関係が悪化していることが分かる一つのバロメーターが「挨拶」ではないか?と思うのです。
挨拶は、簡単なことのようで、実は良好な人間関係が築けていない場合、何かしらの感情が働いてしまい、社員同士の挨拶の声が聞けなくなってきたり、お客様に対しても「声をかけよう」という気配りが希薄になりがちです。挨拶をしなくても別に良いでしょ、という雰囲気になるのです。
それは、ハラスメントが起こっている場合も実は同様に言えることです。社内でハラスメントがある場合も当然社内の雰囲気は第三者から見てもよくありません。
会社の雰囲気はハラスメントの有無を感じ取れるもの
お客様企業に初めてお伺いするときは、なんとなくこの「挨拶」はどうだろうか?と見てしまいます。
会社の受付に入ったり、会議室に通される道すがら出会った社員の方から「こんにちは」と声をかけられると、『あ〜よかった』とホッとしている自分がいます。
挨拶のある職場を遠目で見ると、活気も感じられ、そして社員同士が笑顔で会話をしていることが多いのです。会議室やミーティングブースからは、熱量高く発言をしている声が漏れ聞こえてきて、会議の傍ら笑い声も聞こえてきたりすると、そこでまたホッとするものです。
ハラスメントのある土壌を社内に作ってしまわないために
実は、この判断ポイントは、ハラスメント問題にも共通するものです。
ハラスメントがある会社では、なかなかこの「元気な挨拶」と「社員同士の活発な笑顔の意見交換の場」を見聞きすることができません。
そして、雰囲気が良い会社に共通していることがあります。それは、「社長自らが社員に積極的に声をかけ、挨拶をし、話しかけている」ということです。
会社の雰囲気づくりはまず社長から。社長の言動によって社員に気づかせるという絶妙な指導法を自然にされている社長のいる会社は、ハラスメントのない、働きやすい職場だと、これまで中小企業の方々と接してきて思うところです。
ハラスメントまで行かなくても、日常的に怒鳴り声や強い叱責がある職場では、会社の雰囲気が悪くなりがちです。怒号や強い叱責がある状態が日常となり、職場環境が悪いことを誰も問題視しなくなります。感覚が麻痺してしまっているとも言えます。それは、のちのちにハラスメントの問題を引き起こす可能性が高くなる危険なサインです。
ハラスメントの芽は小さいうちにその都度摘んでいき、笑顔と活気がある職場がいつもの状態だと言えるようにしていくためには、会社全体としてハラスメントは許されないという認識を持っていくことがまず重要です。
特に一番その意思をはっきりと示さなければいけないのは、「経営者」「経営層」であると思います。
自社の土壌をどう作っていくか?は、経営者の人材に対する思いや経営方針が色濃く反映されていくものと捉えています。
土壌を実際に耕す作業人は社員であったとしても、その耕し方を指導したり、何のために耕しているのかを示して社員を導くのは経営者・経営層の役目かと思います。
耕した土壌にどんな芽を生えさせたいのかも、土壌を耕す前から決めているのが経営者・経営層です。そこに、本来望んでいない種が作業人によって撒かれていて、望んでいない芽が生えてきたとしたら、それは間違いだとはっきり伝え、芽を生やし続けることを許してはいけないと思います。そのまま芽が成長してしまったら、経営者・経営層が計画していた花は咲かず、実がつきません。
そして、その間違った芽を社員みんなで摘み取ることも指示し、なぜ間違った種を撒いてしまったのかの原因追及と予防策を立てて社員に間違いがないように導くのは、同じく経営者であり経営層であると思います。
そこで重要になるのは、経営者・経営層自らが、どんな言葉を社員に向けて発していくのかという事と、どうやって社員に経営者・経営層の思いを理解してもらうのかという事です。経営者・経営層が思いを伝えるシーンでどんな言葉を選び、伝えるのか?は、私たちのようなコンサルティングをしている第三者が代わりに提供してはいけない事であると思っています。親が我が子を育てるときに、子供に直接かける言葉とその内容は、親の教育方針や、我が子にどんな大人に育って欲しいかによって異なり、そこは親が思いを言葉に乗せて丁寧に接していく部分だろうと思うことと、子供とのコミュニケーションの醍醐味の部分でもあると思っています。それと同じように、経営者・経営層と社員との一番重要な関係性構築の部分に第三者が入り込むことは越権行為だと思えるのです。
また、他人が肩代わりしては、いつまでも経営者が考え、伝えられるようになりません。
すべては、経営者・経営層がどんな土壌にどんな芽を生えさせて育てたいのか、その思いを社員に伝えて、それとは事なる方向に進んでいる場合には、それを「そうじゃないよ、なぜならば・・・」と説明して理解してもらいながら、本来の方向に修正していく。これが社風づくりであり、社内の雰囲気づくりに欠かせない経営者と社員の関係性構築になるのだと考えます。
初めからうまく言えなくても、自分で考えて言葉を発し、社員の反応をフィードバックとして受け止め、試行錯誤するからこそ、自分たちならではの土壌ができていくものと考えています。
働きやすい職場をつくることは経営者の義務です
大企業では難しいですが、社員一人一人にまで経営者の目が行き届きやすいというのも中小企業の利点です。その利点を活かして、就活生に誇れる会社の雰囲気づくりが大企業よりも素早くできるのが中小企業ではないかと思います。
とはいえ、今日・明日ですぐに会社の雰囲気づくりができたり、あまりよくない雰囲気をすぐに良くすることも難しいので、会社の雰囲気づくり・社風づくりは、経営者・経営層が長期的に取り組むことが必要な部分となります。
また、職場環境を整えることについては、労働安全衛生法でも定められています。
同法では、従業員にとって働きやすい環境を整える「配慮義務」が経営者にはあるとしています。つまりは、職場環境を整えること、悪しき職場環境の改善をすることは、経営者の責務とされているのです。
まとめ
若手社員が「入社したい会社」と思える企業の雰囲気に自然となるように、まずは人間関係を含む職場環境をチェックして整えていけば、若手社員の採用が叶うだけではなく、今いる人材がすぐに辞めてしまうような残念な流れを断ち切り定着率も良くしていくこともできるのです。そうすれば、人手不足に悩むこともなくなっていくのではないでしょうか。
会社の雰囲気と密接にかかわってくるのが、ハラスメントの有無です。
経営者自らがハラスメントを許さないという姿勢を示し、会社としてのあるべき社員像と未来の目標を社員に根気よく共有していくことが人手不足の問題解決の第一歩になり得るでしょう。