社員の健康状態を丁寧に観察することが企業の生産性向上のカギ
こんにちは。スタッフの奥村です。
本日は、生産性を向上させたいならば、社員の『健康状態を丁寧に観察しよう』というお話をお伝えしたいと思います。
もくじ
病欠で会社を休む vs. 体調不良の状態で勤務する、会社にとってよりダメージなのはどっち?
今年も早いものであと1か月となりました。
今年の年始に掲げた年度目標は、達成されそうでしょうか?
1-12月、4-3月など、決算期は様々な会社がありますが、やはり12月は何かと年始からの振り返りをしたくなりますよね。
振り返る前に最後のひと踏ん張り!とばかりに、年度計画の達成に向けて忙しくお仕事に邁進されている社員の方も多いかも知れません。
そんな社員のパフォーマンスにストップをかけてしまいがちなのが、この寒い季節に流行する風邪やインフルエンザ、そしてコロナ等のウィルス感染。これらにかかると、どうしても会社を休まなければならなくなります。
こういった「病欠」で会社を休むことを【アブセンティーイズム】と言いうのですが、アブセンティーイズムによって、進めるべきプロジェクトも進みが悪くなり生産性は低下します。 医療費もかさむアブセンティーイズムは、会社にとって好ましくないというのは理解できると思います。
しかし、この【アブセンティーイズム】よりも、実際に病欠として会社を休むほどではないけれども、体調が好ましくないまま仕事をし、生産性が低下する【プレゼンティーイズム】の方が、実は会社への損害が大きいという調査結果が2021年に(株)日本総合研究所がまとめたレポートに記載されています。
つまり、プレゼンティーイズムは社員のパフォーマンスの発揮に大きく影響を及ぼすというのです。
この、会社を休むほどではない健康問題というのは誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
プレゼンティーイズムに見られる健康問題の代表例としては、女性で言えば生理痛や更年期障害による辛い諸症状が出ている状態、また、片頭痛やアレルギー性鼻炎、糖尿病、メタボリックシンドロームによる健康上の悪影響等もそれに挙げられます。
さらに、同レポートによると、アブセンティーイズムよりもプレゼンティーイズムの方が企業への損失や医療費等の健康関連総コストに占める割合が高い(75%)という結果を示していました。
誰でも経験している「体調不良だけど頑張って仕事をしている」状態を今後は会社で考えていかなければならない理由
プレゼンティーイズムにより生産性が低下しコストが上がるということを考えると、会社を休むまでもないけれど健康に何かしらの問題を抱えている社員へのケアというのは非常に大切だというのが分かります。
女性の生理痛は周期が安定的にある方であれば、このプレゼンティーイズムが毎月のようにあるわけです。
また私の周囲にもよくいらっしゃるのですが、片頭痛にたびたび悩まされている方もけっこう多いです。
大きな病気じゃないし、痛いけれど仕事ができるなら・・・と痛さをこらえてそのまま仕事をしているのが大半です。
しかし、日本が少子高齢化となり、新たな人材を採用するのがだんだんと難しくなっていくとなると、今いる人材を有効活用して生産性をいかに上げていくかは考えていかねばならないので、こうした表に出ていない健康問題も無視はできず、会社としても真剣にプレゼンティーイズムへの対応を考えなければならない時代になってきたと言えるのではないでしょうか。
労働生産性に与える損失割合が高い病は「うつ病」
プレゼンティーイズムに影響を及ぼす疾患の中には『うつ病』も含まれています。
うつ病も悪化する前だとあまり周囲には分からないことも多いのです。
しかし、当然ながら、集中力がなくなったり、思考力が低下したり、コミュニケーション能力が低下したりと、その症状は出てきますので、生産性に大きく影響するのは言うまでもありません。
そして、うつ病が悪化すれば、病欠(アブセンティーイズム)となって更に会社の生産性の問題が大きくなります。
同レポートにもありましたが、アブセンティーイズムによる年間労働生産性の損失割合はうつ病が最も多い(10.7%)のです。
さらにうつ病患者の数は年々増加傾向にあります。
私どもが実施させていただくセルフケア研修やラインケア研修では、『不調の早期発見』を口が酸っぱくなるくらいに受講いただく方にお伝えしています。
早いうちに体調の異変をキャッチすることは、個人の健康の問題だけではなく、会社の経営上の問題にもなってくるからです。
社員の健康問題を観察して生産性を向上していくために、経営者や人事の皆さんが考えていきたいこと
私が昔、企業内人事として働いていた頃も、目に見えるケガや手術が必要な病気にかかってしまった社員に対しては、配慮も十分できていましたが、目に見えない健康問題については、仕事ができている時点でさほどケアは必要ないと判断しがちで、仕事をするかお休みを取るかは社員本人の判断に委ねていました。
しかし今の時代は、目に見えない健康問題にも配慮しなければならないと改めて感じます。
策としてどうするか?はなかなか難しい部分ではありますが、少なくとも、それらの症状で辛いということを本人が言える環境を整えることは必須ではないでしょうか。また、それらの目に見えない健康問題に対する周囲の理解があることも必須です。
そして、今後ますます世の中に増えていくうつ病については、本人ですら何かおかしいと思いながらも見過ごしてしまいがちな病であるがゆえに、早期発見につながる目を全社員が持てるように、セルフケア・ラインケアについては絶対に全社員が知っておくべき知識なのだろうと強く思います。
まだセルフケア研修やラインケア研修を実施したことがない!と気が付いた経営者の方、人事の方は是非、1年の振り返りとともに、来年の計画の中に取り込んで研修を実施していただきたいと思います。
早期にストレスを解消する方法や、早期に異常を発見する方法は、意識して知ること、そして実践を日頃からしておかなければ何も解決できないからです。
健康問題は個人の裁量だけに任せず、周囲も気にかけていき、目に見えない健康状態を見過ごさず生産性を上げていく会社こそが、今後も末永く繁栄していける時代になるかも知れません。