社員との面談はしないとだめ?:メンタル不調社員からの面談要望に対応するために
こんにちは。スタッフの奥村です。
会社で働く中では、社員のメンタルヘルスに不調が生じる場合があります。このようなとき、社員から人事に面談の要望がくることもしばしばあるかと思います。
普段、中小企業の人事ご担当者の方とお話ししていると、このような面談要望を受けたときの人事担当者の悩みとして、「どう対応したら良いか分からない」ということをおっしゃる方が多いものです。面談の場でどんな声がけをしたら良いか、どんなアドバイスが必要なのか、どんなテンションで応じたら良いのかという悩みや、面談中の人事担当者の言動がむやみに相手を傷つけてしまったり、余計にメンタル不調にさせてしまうのではないか?という不安を吐露する人事の方も多いと感じています。
中には、頭では面談に対応すべきとわかっていても、つい「これは重要なことなのか?」と考えてしまうなど、人事担当者それぞれ、いろんなお悩みがあるようです。
そこで、本日は、メンタル不調の社員との面談にあたっての不安や悩みの払拭に役立てていただけるように、また、面談の大切さを理解しながら意味を持って面談に臨めるように、人事担当者の皆様に知っておいて欲しいことをまとめました。
目次
面談に対応する前に知っておきたいこと
まず、現代のビジネス環境において「社員のメンタルヘルス問題」が課題の一つにあることを知っておいて欲しいと思います。 特に中小企業では、限られた人員で業務を回す必要があり、ひとりの社員の不調が組織全体に大きな影響を及ぼすことがあります。
◆ 体調が好ましくないまま仕事をすると生産性が低下する【プレゼンティーイズム】が会社に与える損害については、こちら↓で書いていますので、ご参照ください。
このように、社員の健康問題は社員個人の問題だけではなく、会社にも影響を及ぼすことになります。人事としては、メンタルヘルスケアの施策を会社に取り入れて、メンタル不調を未然に防ぐことがまずはとっても大事なことです。
面談依頼をした社員の話をまず聴く
さて、メンタル不調の社員からの面談依頼があった時に「人事が面談するよりも先に、産業医など、会社が契約している医師への面談に切り替えたら良いのかもしれない」と考える人事の方もいらっしゃるでしょうか?
しかし、人事にファーストコンタクトがあった社員がメンタル不調のようだから・・・と産業医等にまず繋げることを優先するのは時期尚早の場合もあるので注意が必要です。まずは、その社員の面談の目的を面談でちゃんと確認してからでも遅くはありません。
私の経験上、メンタル不調の社員の面談は、メンタル不調をダイレクトに相談する内容というよりは、その時点ではメンタル不調と関係するかどうかも分からないけれど、ご本人にとっては重要と感じている別の話題だったケースもありました。 では、可能性として、どんな内容が考えられるでしょうか?
面談で話に上る話題をある程度予測しておくと、人事担当者としてもこころの準備に役立ちます。以下は一例ですが、参考にしてください。
〔面談時にどんな話になる可能性があるか〕
- 仕事上の悩みやストレス ・業務の負担が大きい、締切りが厳しい、周囲からのプレッシャーなどの話題 ・チーム内の人間関係のトラブルやコミュニケーションの問題
- 健康状態や体調の変化 ・睡眠不足、食欲の変化、仕事へのモチベーションの変化、体調不良が続いているなどの訴え ・医師の診断の結果についてや通院・投薬の必要性とそれによる勤務への影響、休職相談
- 働き方の見直しや調整の要望 ・業務内容の変更や軽減、リモートワークの希望、時短勤務などについての相談
- 将来の不安やキャリアについての悩み ・現在の仕事に対する適性への不安や将来への焦り
- プライベートな事情 ・家庭問題、金銭的な悩み、介護や育児などが原因でのストレス
以上のような内容が考えられます。
また、本来なら、その社員の直属の上司など、所属しているチームの上長に相談をする流れがある中、わざわざ人事に面談の申し出をしてくる場合は、“上長には言いにくいこと・言えないこと” ではないか?という予測も立てられます。そうなると、より深刻な話に及ぶ可能性があることも考えに入れて聴く準備をしておくと良いのではないでしょうか。
面談前の不安を払拭するには
もしかしたら深刻な話になるかも・・と考えると、余計に対応するハードルが上がって尻込みをしてしまいますか?
そのように尻込みをしてしまったり、面談前に不安になるのは、”人事担当者としての対応の仕方に正解を求めているから” かも知れません。
正解を求めず、まずは相談者の状況を案じることで、尻込みや不安を感じるより前に、何とかしてあげなければ!という思いが先に立って、面談の場をすばやく設けるアクションに繋がるかもしれません。
ここで言う”相談者の状況”とは、先程の”上長に言えない事情”の他、相談者のこころの状況(状態)も指しています。
相談内容にもよりますが、面談依頼をしてきた相談者は多くの場合、次のような気持ちを抱えていると想像できます;
- 誰にも話せない孤独感
- 職場での理解が得られるかという不安
- 自身が迷惑をかけているのではないかという罪悪感
- やっぱり人事に面談を依頼しない方が良かったのだろうかという迷い
こうした心情の中、勇気を振り絞って人事に面談の依頼をしているかもしれず、もしそうだとしたら、この時点ですでにかなりのストレスを感じているかも知れません。
やはり、人事担当者である前に人として、悩んでいたり苦しんでいる人は放っておけませんよね。とにかく早く面談を設定して「話を聴こう!」と思えませんか?
また、人事担当者としてやってはいけない対応は、面談依頼を軽視してしまったり、面談を先延ばしにするような対応です。社員の信頼を失ってしまうことに繋がるだけでなく、相談者の不調が悪化する可能性もあるからです。
面談の依頼を受けたら、相談者の気持ちや状況に矢印を向けて、早めに話が聴けるように面談日を迅速に設定するよう心がけましょう。
面談に備えて人事が用意しておくこと
面談日を設定したら、人事としては次のような用意をしておきましょう。
- 面談環境の整備(リラックスした環境を整える)
・プライバシーが守られる静かな場所を用意する
・十分な時間を確保し、急かさない姿勢を示す(ただし、相談者の体調を鑑みて、長時間の面談にならないように配慮も必要です。例えば、Max1時間までと予め時間を決めておき、1時間以内で話が終わらなかったら、次の面談日をその場で決めます。そのように1回で話が終わらない場合には、数回に分けて話を聴くことも考えましょう。) - 事前情報の収集
・社員のこれまでの勤務状況や最近の変化(遅刻・欠勤、業務遂行状況)を確認する。 - 社内外のリソース情報
・産業医やカウンセラーの連絡先や利用方法。
・社内のメンタルヘルス支援プログラム(EAPなど)があれば、その案内。
・労務的な手続き(休職や時短勤務)についての概要。 - 就業規則の知識
・休職や復職プロセスに関する具体的な運用ルール。 - 相談記録の準備
・相談内容を記録するフォーマットを用意(プライバシーに配慮)
前述のような用意をしておけば、面談当日はあわてずに相談者の話に集中して面談に臨むことができます。
面談時の注意点と人事の心構え
それでは、面談当日は人事担当者としてどのように面談に応じていけば良いのか、主な注意点をまとめました;
- 相手の気持ちを尊重する
「話を聞いてあげる」ではなく、「話を聞かせてもらう」という姿勢で臨みましょう。
社員がどれだけの勇気を出して話しに来たかを理解し、その思いに応えることが大切です。 - 表現と言葉を意識する
事務的な態度ではなく、温かみのある表情と言葉を意識してください。
また、共感的に話を聴いていきます。 - 途中で遮らず話しやすい状況づくりをする
相談者の話の途中で遮らずに傾聴し、質問をするときも、相談者が話しやすいようにオープンクエスチョン(「はい」や「いいえ」の回答になってしまう質問ではなく、自由に回答(話)ができる質問のしかた)で確認をしていくと良いでしょう。 - 判断や解決策を急がない
面談中に解決を急がず、まずは「話を聴くこと」に徹します。
面談の目的は、問題をすぐに解決することではありません。まずは社員の話を十分に聞き、状況を把握することに専念しましょう。
適切な対応策は、その後でも遅くありません。 - 個人情報の保護
面談で得た情報は、関係者以外に漏らさないよう細心の注意を払いましょう。 - 無理に深堀りしない
プライベートな問題について、本人が話したがらない場合は、無理に聞かないようにします。 - 専門家に繋ぐ判断をする
人事が対応しきれないと感じた場合は、速やかに産業医や外部専門家につないで専門家の意見を聞くように相談者本人にも促し、納得をしてもらいます。 - 継続的なフォローを心がける
一度の面談で終わらせず、その後も様子を気にかけることが重要です。
定期的なチェックを行うことで、社員は「気にかけてくれる人がいる」という安心感を得られるのと同時に、相談しやすい環境づくりに寄与するはずです。
このように、社員が安心して話せる環境と、適切なフォロー体制を整えることで、メンタル不調への支援がより効果的になります。上記はあくまでも一般的に言える面談時の注意点ですが、具体的なケースや状況に応じて柔軟に対応する姿勢も重要です。
◆ いざ面談へ!その時に人事担当者が悩みがちな事への対処については、こちら↓のブログをご参照ください:
面談後は、その後の対応に備えて、対応履歴をプライバシーが守られるように適切に管理することも忘れずに。
人事担当者としては、突然の面談にも落ち着いて対応できるように、これまでお伝えした事前の備えや当日の注意点の他、「傾聴スキル」や「労働基準法・健康管理に関する規則の理解」も日ごろからアップデートしていけると良いですね!
面談の重要性を再認識する
また、もしかしたら、人事担当者の中には、「日々の業務で忙しい」「面談は苦手」という理由で、社員からの面談依頼に消極的な方もいるかもしれません。しかし、面談には以下のような重要な役割があります:
- メンタル不調の早期発見と対応が可能になる
メンタル不調を放置すると、最悪の場合、長期の休職や離職につながります。
一方で、早めに話を聞き、適切なサポートを提供すれば、社員の回復を早め、休職を防ぐことができます。 - 社員の信頼を得てエンゲージメント向上へ
「自分の話を聞いてくれる」という経験は、社員に安心感を与えます。
信頼関係が構築されると、職場でのモチベーションやエンゲージメントも向上します。 - 会社全体の生産性を守る
メンタル不調の早期対処は、組織全体のパフォーマンスを守ることにもつながります。
少数精鋭で運営する中小企業にとって、社員一人ひとりの健康は、ビジネスの持続可能性に直結します。
いかがでしたか? 社員からの面談依頼は「社員の健康を守り、会社を支える大切な機会」として前向きに取り組むことで、それらの成果を生み出せます。 今いる社員を大切にし、彼らの声に耳を傾けることは、企業の持続的な成長にとって欠かせない取り組みです。社員との信頼関係を築き、健全な職場環境を作るために、ぜひ今日から人事担当者としての大切な役割であることを再認識して臨んでみてください。
もし、社員がより相談しやすいように、社内だけじゃなく外部の相談窓口も設けたい場合や、メンタル不調の社員への対応に関する悩ましい部分に適切なアドバイスが必要な場合には、ぜひ当社にご相談ください。